パリでSnapchatのAR「3Dアート」を鑑賞してきた!AR体験談と今後の広がりについて

Snap Inc. が10月3日に新たな取り組みをスタートさせた。それは、AR上でアート作品を特定の場所に展示するというデジタルインスタレーションで、Snapchatアプリを介して体験できる。10月20日現在、彫刻家Jeff Koonsの作品が9カ国21箇所で展示されているが、残念ながら日本は該当しない。リリース直後、フランスにいためエッフェル塔前でSnapchat初のデジタルインスタレーションを鑑賞してきた。体験談から、本キャンペーンが起こした議論、他IT業界のAR動向をまとめた。

取り組み内容の紹介

今回のデジタルインスタレーションは、アート作品の3Dデータにジオタグが結びつけられており、その場所に行くと本キャンペーンのフィルターを発動できるようになる。分かりやすく言うと、ポケモンGOのポケモンがアート作品になっているような感じ。ただ、3Dであるため作品をいろんな方向から楽しめる。

実際にやってみました

アートを見つけることは非常に簡単。特設サイトからGoogle Mapsで緯度経度情報が取得できるため、その場所近くでSnapchatアプリを立ち上げるだけ。実際の動きを下記にまとめてみた。(※デジタルインスタレーションを体験するにはネット接続が必須)

  1. 指定の緯度経度近くでSnapchatを立ち上げる
  2. 指定エリア内にいると、Jeff Koonsのデジタルインスタレーションのフィルターが出てくるので、それを選択
  3. すると、バルーンで「Jeff Loons」という文字が出てくる
  4. アート作品がある方向にピンが落ちる
  5. ピンに近づくと、ピン下の数字が小さくなりました。アート作品までの距離(m)なのか、歩数なのかわからないが、数字小さくなることで近づいていることがすぐにわかった(この演出は楽しい!)
  6. 突然、「アートのアイコン」や「左を見て」と画面に表示される
  7. そちらを向くと、そこにアート作品がある
    実際の映像はこちら(画面揺れと、割れで見難くてごめんなさい)

楽しかったけど、もっと楽しくできるはず!

演出としては、ワクワクしたし楽しかった。360度あちこちからアートを鑑賞できるのも良かった。Jeff Koonsの作品を生で見たことはないが、金属が反射するリアルさも演出できており面白かった。(ただ、「そこからそれは反射しないよね」という反射も発見した)写真で見てもわかると思うが、作品が現実世界に溶け込んでおり、ARとしてのクオリティはとても高いと思った。個人的な感想として、もっと楽しくできそうと思ったことが2点ある。

アート作品を見つけるまでの時間を少しだけ伸ばす

アート作品到達までの時間をもう少しだけ長くすると、ワクワクする気持ちをもう少し長くできると思った。もちろん難しくすることは、離脱につながるためよくないが、今回は簡単すぎた。アートの展示場所より、アートの展示が見つけられるスタート地点を教え、あとはピンを動かしたり、ピン上の数字をコントロールさせ、もう少し探させて欲しかった。(もちろん、人が多いところなので危ないという視点も大切)

写真撮影の難易度を下げたい

▲ARに近づいていい感じに写真が撮りたいのに撮れない様子

アート作品だけの写真を撮るのは簡単だが、アート作品と人orエッフェル塔などとリアルな何かと一緒に撮ることはとても難しかった。普通に写真撮影するだけでもコツがいるのに、このアート作品は動くのだ! 画学に収めようといろんな角度や場所を試しているうちに動いてしまい、もう一度調整し直し!ということが何度も起こった。動くことは演出としては楽しいのだが、写真や動画を簡単に上手に撮れるようになるともっと楽しいと思った。(ちなみにアート作品が動くことは演出なのかエラーなのかは不明)また、いい写真が取りやすくなると拡散につながるので、マーケティング視点でも非常に大切。

リリース数日でARアート作品に落書きされてしまった!?

今回のキャンペーンだが、デジタル上にあるアート作品があっという間に落書きされてしまったことでも話題を呼んだ。そう聞くと攻撃されたかのように聞こえるが、そうではない。アート作品が紐づいているジオタグに落書きデータを重ね、落書きされているように見える画像が作成された。

この落書きを仕込んだのは、ニューヨークを拠点に活動するアーティスト集団で、「企業が好きな場所にデータを置くこと」について問題を投げかけるため作成したよう。アートに対し、すぐにこのような対応ができる柔軟性はさすがアーティスト集団。「セントラルパークはニューヨーク市が所有しているのになぜ無料で勝手にデータをおけるのか?場所代を払うべきではないか?」と主張している。

AR上の土地の権利について、日本ではどうなっているの?

(※筆者は法律の専門家でないため、下記は法律のプロにインタビューして書いています)
現在の日本の法律で、土地の権利は物理的な土地とそれに定着している不動産にある権利でありバーチャルなものの権利ではない。Snapchatの本キャンペーンも画像処理をしているだけなので、不動産の権利に関わることはない。ただ、気をつけないと訴訟対象にもなり得るようだ。
建物名を社名などにしている「ネーミングライツ」の物件の場合、名称をイメージダウンさせることは、商標法、不正防止法の侵害になる。また、状況によっては不法侵入を促したとして民事的訴訟が起きたり刑事告訴になる可能性があるという。どんなケースかというと「事業者が許諾していない目的でその場所に入る目的を作る」ということ。例えば、コンビニには誰でも入ることができると思っているが、店が求める形でない来客は不法侵入に当たる。勝手にアート作品をコンビニに置き、事業者が許諾していない形で人を集めてしまった場合、事業者がデータを置いた会社を訴えることができる。
上記は可能性であり、他にも様々なケースが起こりうる。ただ、まだルールが整備されていないのが現状だ。だからと言って、何も気にしなくていいわけではなく、そこに本当に設置していいんだっけ? 設置するものは適切なんだっけ?という点は配慮しなければならない。
本記事のため調査をしていたところ、日本では「セカイカメラ」が話題になった2010年にこのような議論が起こっており、記事を見つけることができた。もしセカイカメラのサービスが続けられていたら、日本は世界一「ARに成熟した国」になっていたかもしれない。

IT企業が続々とAR開発用プラットフォームを発表

特定のカメラアプリで人の顔を認識させると、顔を変形させたり、イヌやウサギなどの動物に似せることができるAR機能はすでに多くの人が体験したことがあるだろう。今回のSnap Inc.のデジタルインスタレーションは、2016年11月にリリースされた3DオブジェクトをAR上に置ける機能「World Lenses」で実装されており、前者とはまた別の機能となる。

このような機能の流れは広がりを見せており、開発者用のプラットフォームもどんどん発表されている。Facebookは2017年5月に「Camera Effects Platform」を発表。Apple Inc.は、iOS11からAR対応アプリが作れる開発者向けキット「ARKit」を6月に公表し、9月にリリース。Googleも「ARKit」と同様の「ARCore」を8月に発表し、同時にプレビューリリースしています(本リリースはまだ)。ARKitを使用したアプリもすでにあり、代表例としてあげたいのが「IKEA Place」。ARで気軽にIKEAの家具を置くことができる。

AR技術のプラットフォームが整備されてきているため、今後ARを活用したアプリは増えてゆくだろう。

そしてSnapchatは・・・?

2016年9月、Snapchatが自社のことを「カメラカンパニー」と称したことで話題を呼んだ。2017年2月の上場時の申請書にも「Snap Inc. is a camera company.」で始まる。2016年10月にはSpectaclesというGoogleグラスのようなカメラ付きグラスを発売。現在、大量に売れ残っているようだが、カメラ会社としてプロダクト開発にも前のめり。(レビュー記事あり!)

今回、突如現れた「Jeff Koons x Snapchat」という特設サイトに「アーティスト募集」というフォームがある。今後、世界の至る所で様々なアーティストの作品をARで楽しめる時がくるのだろうか。

Snap Inc.の公式サイトに下記のような説明がある。

今回のデジタルインスタレーションについても、カメラを介し実現できること。「Snapchatのよって、自己表現の世界を広がり、毎日を楽しみながら、世界を体験し、その喜びを友だちと分かち合うことができます。」というビジョンからブレていない。

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