社会問題にまで発展した中国タクシー配車アプリの実態とは

上海でタクシーに乗ると、「リンリン(鐘の音)、シェイシェイ、我不會說中國話 所以我不明白它的任何」という音が何度もリピートされることに気づいた。これは、タクシー配車アプリに送信されたお客さんからの依頼だ。いま、中国都市部では、タクシー配車アプリのシェア獲得合戦でアリババとテンセントが火花を散らしている。各社の戦略で利用者数は増加する一方だが、タクシーが拾えなくなるという社会問題が起きている。今回は、その実態を探ってみた。

前提として「アリババ」「テンセント」を知っておこう

Alibaba(阿里巴巴、アリババ)150文字解説

ジャック・マーが率いる中国のIT企業。今年9月、米ニューヨーク証券取引所で取引が開始され、株式時価総額は25兆円とアマゾンを越す。グループの代表的なサービスは、BtoBのEC「阿里巴巴(アリババコム)」、BtoC、CtoCのEC「淘宝網(タオバオ)」、オンライン決済「支付宝(アリペイ)」などがある

Tencent(騰訊控股、テンセント)150文字解説

ポニー・マーが率いる中国のIT企業。中国最大のSNS「QQ(キューキュー)」とスマホ特化型SNS「WeChat(ウィーチャット)」(ユーザー数4.4億人の中国版LINE)を運営。オンライン決済「財付通(テンペイ)」や、ゲームにも力を入れている。最近では中国版パズドラ展開のためガンホーと事業提携を発表

一騎打ちをしているタクシー配車アプリは?

(左)アリババの「快的打車(クァイダーダーチャー)」と(右)テンセントの「滴滴打車(ディーディーダーチャー)」が対立している。2014年9月時点でのシェアは、「快的打車」が54.4%、「滴滴打車」が44.9%。同月、タクシー配車アプリの累計利用者数は1.5億人に達した。

どんなサービスなの?

ユーザーは、アプリを立ち上げGPSで現在地を取得、行き先を手入力(音声入力も可)後、送信。すると、それぞれのアプリを使用しているタクシー運転手のスマホに音声で通知が入る。これが冒頭の「リンリン(鐘の音)・・・・」である。運転手は、通知内容から乗せたいと思ったお客さんに返信。自分が行きたい方面に行くお客さん、長距離移動するお客さんが好まれる。タクシー代の支払いは、現金でもOKだが、中国人はアリペイやテンペイでも決済できる。アプリ自体は無料。利益はアプリ広告とオンライン決済サービスの手数料から得ている。

実際に、テンセント「滴滴打車」を使ってみた

  1. 現在地取得、タクシーマークは周りにいるタクシー
  2. 行き先を入力
  3. 送信
  4. 「近くにいるタクシー運転手51人に依頼が通知された」との通知
  5. 数秒後、「2人から返信」と通知
  6. タクシー運転手の名前、ナンバープレート、居場所も見られる(1分くらいで着くらしい)
  7. 運転手から入電、詳しい場所を話す。ナンバープレートを見ながらタクシーを待ち、そのタクシーがきたら手を挙げて知らせる
  8. タクシー内で運転手のレビューができる
    ※ テンペイやアリペイに登録しているとそこで決済ができる。使ってみて思ったことは、電話もかかってくるため、中国語がわからないと使用できない。

どうやってユーザーを獲得したの?

テンセントやアリババがユーザー獲得のため、オンラインで決済すると初乗り代金をキャッシュバックするキャンペーンを行った。「滴滴打車」は、たった80日弱のキャンペーンでユーザー数を2000万から1億まで増加させた。キャンペーン前(2014年1月)、「滴滴打車」は60%ものシェアを獲得していたが、「快的打車」の5ヶ月間のキャンペーンでシェア首位を取られてしまった。
アプリを使う人が増えるとタクシーを捕まえ難くなるため、各社は「チップ機能」を追加。ユーザーはこの機能で、通常の乗車代賃にチップを上乗せし配車依頼をできるようになった。
タクシー運転手の獲得方法では、「快的打車」が実際に行った施策がある。まず、インターネットに弱い運転手をサポートできるよう、運転手のたまり場近くにオフィスを作った。また、「アプリを他の運転手に勧めた運転手に対し、ビールを1ケース単位でプレゼント」というキャンペーンを実施した。特に後者は効果があった模様。
全体的に、サービス内容の魅力より、お金でユーザーを買ったようだ。しかし、確実にユーザーを引きつけることに成功した。

利用者増加で社会問題が発生! 中国政府も対策に出た

タクシー運転手はアプリでお客さんを獲得するようになり、スマホを持っていない人はタクシーを捕まえられなくなるという、インターネット格差が発生した。
政府は、まず、朝の通勤ラッシュ時にアプリを使わないよう周知。しかし、アプリを使用する人はあまり減らず効果はなかった。次に行った施策は、チップ制度を廃止することだった。各社にチップ制度を廃止するよう動き、それぞれのアプリアップデートでチップ登録欄を消させたのだ。引き続き、チップ制度を使用したいユーザーは、アプリアップデートをしないらしい。(アップデートしなければ、チップ通知はできるそうだ)問題は、若干緩和したそうだが、解消されていないため、今後もこの問題を解決するための施策が行われるのだろう。
個人的に気になったことが2点ある。1点目は、タクシー運転手が運転しながらアプリをさわるので危ないこと。運転時の規制をして欲しい。2点目は、アプリを使っているユーザーと運転手の電話番号がすぐにわかってしまうこと。セキュリティ面が気になった。日本でリリースするとしたら、最低限この2つの課題をクリアする必要がある。

【速報】配車サービスに新たな参戦者「バイドゥ」が出陣

中国配車サービスに新たな参戦者が現れた。中国最大手検索エンジンを運営する「百度(バイドゥ)」だ。12月17日、同社はアメリカ配車サービス「Uber(ウーバー)」に巨額の出資を決めた。出資額は公表されていないが、中国メディアは約700億円と推測している。中国進出して1年が経過するウーバー、バイドゥの参戦で今後のシェア構造にどのような打撃を与えられるのか見物だ。

まとめ

「快的打車」と「滴滴打車」のタクシー配車アプリの激戦バトルが始まったのは、今年1月。短期間で、社会問題が起きるほど、市民の生活に根付かせたということに驚いた。また、タクシー配車アプリを通して、オンライン決済に登録させることに成功している所も注目したい。これらの取り組みもあって、オンライン決済やオンライン銀行の普及に拍車をかけたのだ。「オンライン決済」で、日本よりも進んでいる中国。Yahoo! Japanはオンライン決済の成長を重要視しているが、ECではないサービスでユーザー獲得した点は見習えることもあるだろう。これから、どうやってオンライン決済のユーザー獲得をしていくのかが楽しみだ。

おまけ:中国スマホ市場拡大に貢献する通信機器メーカー「シャオミ」にも注目

おまけで取り扱うほど小さなことではないが、今回の件でも貢献していると思うので簡単に書いてみる。iPhoneは中国でも人気だが12万円もするため、買えない人も多くいる。そこで、出てきたのは「 小米(シャオミ)」。「シャオミのスマホはiPhoneと同等の機能なのに価格が1/3」と言われているそうだ(シャオミのCEOレイ・ジュンは、中国のスティーブ・ジョブズと呼ばれている)。2014年第3四半期のメーカー別世界スマホ出荷台数をみると、シャオミは、サムスン、アップルに続き3位に食い込んだ。同四半期の出荷台数伸び率は、211.3%と大きく成長している。安価で質の良いスマホが手に入るようになったため、インターネットサービスもスケールしやすい環境になってきたと言えるだろう。

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